東京の御盾としての硫黄島
硫黄島は、東京から南へサイパンから北へ、それぞれ1.250キロと1.380キロを隔てたところに位置している。つまり、サイパンから東京へのちょうど中間点にある島で、その面積は東京都世田谷区と同じくらいであった。この孤島を手に入れる為、米軍は2万5千余の死傷者を出している。これだけの犠牲を払いながら、硫黄島を占領しようとした米軍の目的は何だったのか。
東京を始め日本の各都市を爆撃するために、サイパンまで進出してきた米軍にとっても、その往復2,500キロの空路は決死の覚悟を求められるほど困難なものだった。航続力のあるB29爆撃機を以てしても、護衛の戦闘機の随伴が出来ない無防備出撃であり、往復する海上での不時着時には救助手段がないことなど決死の作戦であった。事実、占領後の硫黄島に不時着し命長らえた米軍兵も約2万5千名に及んでいる。当然、日本側も米軍の硫黄島侵攻を予測し、この島の防衛こそは東京の御盾との必死の決意のもと栗林忠道・小笠原兵団長以下2万1千名が、米軍上陸に備えていった。そして、米軍の硫黄島侵攻作戦開始時には、地上には一兵の姿もないまでに地下壕が縦横に整備され、猛烈な艦砲射撃と昼夜繰り返される空爆にも地下壕の地熱にも耐えきって、米軍上陸後の反撃に地下深く闘志を燃やしていった。その団結の要にあった栗林忠道・小笠原兵団長については、映画「硫黄島からの手紙」(2006年米国映画 クリント・イーストウッド監督)で渡辺謙氏が栗林兵団長を演じ、如何に尊敬と信頼を得ていたかを知ることが出来る。
栗林忠道中将が硫黄島部隊団結の為に掲げた「日本精神練成五誓」の結論に当たる第五には、「われらは国民の儀表なり、この矜持と責務を自覚し、身を持すること厳に、人を俟つこと寛に、日本精神を宣化せんことを誓う」とある。
われらは、国民の手本となるように、高い誇りを持って行動しよう。人を俟つこと(たよる・期待する)に寛(寛大・親切)の心がけがなければ、和合も団結もない。当初から帰還の望みのない作戦にあっての指揮官の宣誓だけに、一層胸に響くのであった。
昭和20年3月17日、大本営に訣別電を発した後、栗林中将は自ら先頭に立っての攻撃にあたり、訓示を述べている。
「いま日本は戦に敗れたといえども、日本国民は諸君の忠君愛国の精神に燃え、諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対して黙祷を捧げるの日が、いつか来るであろう。安んじて諸君は国に殉ずべし。」
硫黄島にて戦没せられた2万の英霊に対し、後世の日本人が涙して感謝の誠を捧げることを、栗林中将は固く信じて突撃したのであった。
参考引用『散華の心と鎮魂の誠』平成7年 展転社
【警察学校生の感想】
8月15日には、日本を守ってくれた人々に感謝の気持ちで黙祷を捧げたい
私は今回の講話を聴くまで大きく間違った認識をしていました。今までの私は、特攻隊員など兵士となった若者達は軍の上層部の命令だから逆らえば非国民とされ処刑されるかも知れないから、やむを得ず命を落としていったと考えていました。しかし、彼らは絶望の中で死んでいったのではないことを知りました。市島保男大尉の家族が、「聞け わだつみの声」に彼の日記を提供し多くの人々に知ってもらおうとしましたが、当時の軍部の批判の材料とされた為、以降日記の提供を拒んだそうです。彼は命令に従い命を賭した訳では決してない。命令だけで誰が死にに行くだろう。あり得ないのです。講話で紹介された遺書や手紙を読むと、それがよく分かります。彼らは皆、愛する人愛する国そして後世の日本人の為に死んでいったのです。そこまでの自己犠牲の精神を、自分は持てるのか疑問です。
映画「硫黄島からの手紙」は、日本人でなくアメリカ人が制作したものです。硫黄島の戦闘の最期では、指揮官である栗林中将が先頭に立って戦いました。「諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に対し涙を流して黙祷を捧げる日がくるであろう。」との栗林中将の最期の訓示も忠実に描かれているそうです。私は、とても恥ずかしくなりました。今まで知ろうともしなかった無知な自分と比べ、アメリカでは映画を作り子供達に伝えています。
松尾敬宇中佐の話には、感銘を受けました。戦時下、敵国による海軍葬などあり得ないことです。しかし、日本兵の勇気に敬意を払ったのは、その忠実さ純粋さそしてサムライの魂を感じたからでしょう。
私は、自分の国の偉人達のことを誤解し、その御陰で生かされていることも知らず、感謝すらできていないことに気づかされました。日本の武士道にある礼節、相手への尊敬の感情、そして愛する者のために命を賭する覚悟。私には総て足りていないと感じました。しかし、これらの精神を以て県民のために働きたいと考えました。警察官となって誰かを助けるということの意味を再認識しました。次の8月15日には、日本を守ってくれた人々に感謝の気持ちで黙祷を捧げたいと思います。
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